らびっとクリニック院長の医療雑話

STAP細胞報道におもう

投稿日:2014/5/11

私もその昔、大学や研究機関と言われる場所で「浮き世」からはなれて、洟水みたいなDNAをいじくったり、「寒天」のような電気泳動用ゲルの製作ばかりして過ごした5−6年がありました。研究生活と言えば聞こえは良いのですが実態は(私の場合に限っては)お料理教室で一生懸命レシピ通りのおかずを作る作業とさしたる違いはなかったかも知れません。ただこのお料理教室を終了する前にはちゃんと「ペーパー」(「紙切れ」という訳でもいいのですがここでは「生物学系論文」のこと)を残してから出て行かなければならないという掟がありました。

小保方さんのようなトップクラスのジャーナルをめざす研究者でなくても、学位論文作成中の大学院生や安定した次の就職先を探しているポスドクみんなが多かれ少なかれ、この有形無形の掟に縛られていることでしょう。

私もこの「紙切れ」、否、「生物学系論文」を書くにあたり先達の論文の文言をひねくりまわした苦労を苦々しく思い出します。受動態の文を能動態に置き換えたり、動詞を似たようなものに変更したり、単数形を複数形にしたり、形容詞をいじくったり・・・なんとかコピペと言われないように苦し紛れの作業を繰り返したように思います。

私自身はSTAP細胞論文問題の全体を何も理解していませんが、おそらく一般の方の素直な反応「オボちゃん、頑張れ」の立場に近い感覚だと思います。こうゆうことを日本の大学や研究機関で言ってしまうとおそらく研究者の立場としてはアウトなのでしょうが。

未熟な研究者だとしてもサイエンスにかかわるものである以上踏み越えてはならないルールがある、もちろんです。研修医1年目の医師であろうと医学的判断を間違って患者に不利益をもたらしたらそれでアウトであるように。だからこそ大学病院のジュニア研修医にはシニア研修医がぴったりつき、シニアはスタッフである助教や講師の医師に監視され、教授はそれらすべてを統括する。ジュニア医師の誤りは院内的には本人の責任としてとことん追求されるが対外的には教授や病院長が最も強く責任を問われる。

一旦「アウト宣告」された彼女ですが、きちんとこの先も研究者として生きていくチャンスが与えられるべきだと思います。どうか消えてなくならないでほしい。チャンスを与えることができるのは、彼女を指導し育てるべき立場にあったひとたち。それとこの騒動を先導(煽動)してきた日本の空気を操る人たちではないかと。彼女はSTAP劇場の主演女優だったかもしれないがSTAP劇場をプロデュースしたのは「成熟した」研究者と組織責任者たち。そして彼女を「リケジョの星」と祭り上げた日本村の煽動者たち。・・・絵島生島事件に似てる?ちょっと違うか。

何故らびっと? Concept 院長ブログ 医療雑話 クリニックからのお知らせ Doctor's Fileにて紹介されました
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