らびっとクリニック院長の医療雑話

電子カルテストレス

投稿日:2015/9/26
この10年余りの外来風景の中で最も変わったことの一つが、医師の姿勢かもしれません。医療に対する心構えというような精神的なことではなく物理的な体の向きのことです。医師がもっぱらコンピューター画面を見ながら、キーボードを叩きながら、時々コンピューターの不具合に悪態をつきながら、たまに横を振り向いて患者の話を伺う(ようなそぶりをする)というスタイルの診察がどこの外来でも一般的になってきました。電子カルテの導入によって医師のカルテ記載は格段に読みやすくはなったわけですが、一方で「医者はモニター画面ばかり見て、まともに患者を見ようとしない」と揶揄されることもしばしば。誰にも読めるカルテ、業務の合理化、オーダーミスの回避、紙とカルテ保管場所の節約などいいことづくめのようですが、電子カルテは医師にとっても大きなストレスの元になっています。目や肩の疲れとともに業務量が明らかに増えているからです。診察所見の入力、検査のオーダー、処方入力と印刷、紹介状作成、次回外来予約などの業務をほぼ全て医師一人の操作でこなさなければなりません(外来クラークが補助してくれるところは別ですが)。患者一人当たりの診察時間は格段に長くなったはずなのですが、「3分診療」時代以上に「モニター見ばかり医者」の評判は良くない。「先生はふんふん聞き流しながらコンピューターばかりを相手にしています」とよく不満の声を聞きます。やっとの思いで処方入力を終えてプリントするや否や、「Aの薬は1週間余っているのでその分日数減らしてください」とか「湿布を5袋追加してください」とかの追加注文があるたびに、おそらく外来医師はものすごーく不機嫌な顔をすることでしょう。いっそもっともっと有能な人工知能をもった電子カルテができて、「検査は前回と同じで」「薬は処方Aは21日分ほかは28日分で、Bの規格は10mgに減量」「次回予約は4週後、薬のなくなる前に」といった言葉のコマンドで操作できるようになればいいのにと思ったりします。将来、次世代型人工知能搭載電子カルテになれば診断や治療計画までもコンピューターが提案してくれるようになったりして、まさに「医者いらず」の時代が来るのかなあなどと夢想します。
でも最近のスマートフォンやロボットではほぼそれに近いことができるのだから、そんな時代も案外近いのかもしれませんね。失業しないように医者もコミュニケーション能力を高める必要がありそうです。
何故らびっと? Concept 院長ブログ 医療雑話 クリニックからのお知らせ Doctor's Fileにて紹介されました
↑