建物や壁に書かれた詩やメッセージには強い力を感じるものが少なくありません。
横浜のみなとみらい駅からクイーンズスクエアにつながる長いエスカレーターからみあげる壁一面に書かれたシラーの言葉が大好きです。先日家族で来た際に改めて読んでみて、日々の瑣事にとらわれることが無意味に感じられて、すがすがしい思いがしました。
もうひとつ。「病者の祈り」という有名な詩は、ニューヨーク・リハビリテーション研究所の壁に書かれている患者の手による詩だそうです。私の子供の通う小学校の担任の先生が、学級通信のなかで子供たちに教えてくれました。子供たちが十分理解できたとは思いませんが、この切なくも力に満ちた祈りの言葉を教えてくれた担任の先生に私は大変感謝しています。
今日はこの2つの詩をそのままここに記載させていただきます。
シラーの言葉
樹木は育成することのない
無数の芽を生み、
根をはり、枝や葉を拡げて
個体と種の保存にはあまりあるほどの
養分を吸収する。
樹木は、この溢れんばかりの過剰を
使うことも、享受することもなく自然に還すが
動物はこの溢れる養分を、自由で
嬉々としたみずからの運動に使用する。
このように自然は、その初源からの生命の
無限の展開にむけての秩序を奏でている。
物質としての束縛を少しずつ断ちきり、
やがて自らの姿を自由に変えていくのである。
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病者の祈り
大事を成そうとして
力を与えてほしいと神に求めたのに
慎み深く従順であるようにと
弱さを授かった
より偉大なことができるように
健康を求めたのに
よりよきことができるようにと
病弱を与えられた
幸せになろうとして
富を求めたのに
賢明であるようにと
貧困を授かった
世の人々の賞賛を得ようとして
権力を求めたのに
神の前にひざまずくようにと
弱さを授かった
人生を享楽しようと
あらゆるものを求めたのに
あらゆるものを喜べるようにと
生命を授かった
求めたものは一つとして与えられなかったが
願いはすべて聞き届けられた
神の意にそわぬ者であるにもかかわらず
心の中の言い表せない祈りは
すべてかなえられた
私はあらゆる人々の中で
最も豊かに祝福されたのだ