タエコさんの体の痛みの部位を指で押して確認する作業を終えると、医師はゆっくり話を始めました。
「これまで大学病院ではどのような検査を受けて、どういう病気だと説明を受けてきましたか。」
「はじめ整形外科を受診しました。X線検査とMRIでは特に異常がないということでした。それで内科に回されて採血でリウマチや膠原病や甲状腺の検査をしましたが、これも異常ないので、今度は心療内科を紹介されました。心療内科ではうつ傾向だというので抗うつ薬を出されましたが、自分では心の病気だとはとても信じられないので飲んでいません。」
「結局どういう病気で痛むのかという説明はどこからもされていないのですね。」
「そうです。それが一番納得できないことです。」
「そうでしょうね。ところでタエコさんは夜はよく眠れますか?」
「寝つきは悪くはないのですが、夢をよく見るのと途中で何度か目覚めます。」
「起きた時にリフレッシュされていますか。」
「いいえ、朝起きた時に少しも疲れが取れていないのです。」
「痛みと疲れと体のだるさの他に何か症状はありますか?」
「口が乾いたり、便秘と下痢が繰り返したりします。また大きな音がすると体と耳に痛みが響きます。」
「いろいろな症状が出てきましたね。主婦だと伺いましたが家の中でどんな時に痛みがひどくなりますか。」
タエコさんは、「おばあちゃんの小言を聞かされたあと」と言いかけましたが慌てて口を閉じました。おばあちゃんのおしゃべり友達のハルコさんもここで治療受けていることを思い出したからです。(この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません)
投稿日:2013/3/21