らびっとクリニック院長の医療雑話

痛みは痛みをひどくする

投稿日:2012/1/25

喉元過ぎれば熱さを忘れるなどと言うのは、辛いことも少し我慢すれば慣れっこになるというくらいの意味でしょうが、こと痛みに関してはこれは当てはまらないと思います。私たちリウマチ医に限らず、多くの慢性疼痛に関わる医師の間では、あらゆる痛みは必要十分に抑えるべきだという認識でおおむね一致しているのではないでしょうか。癌性疼痛に対するオピオイド、三叉神経痛や帯状疱疹後の神経痛に対する抗けいれん剤、坐骨神経痛に対する硬膜外ブロックなど各科ごとに痛みをとるための様々なツールがあります。昔なら、痛みを取るということは二の次でより生命にとって必要な治療に全力を注ぐべきだというようなパターナリズムがまかり通っていました。痛みを我慢させてもいっときのことだ、と思われていたのです。しかし慢性の疼痛では、逆に長期間続く痛みが痛みの閾値を低下させるのだということが指摘されるようになりました。痛みの持続がかえって痛みを強く感じさせてしまうということです。

私たちが生まれ、幼少期を過ごした高度成長期の時代には美徳であった努力、辛抱、根性というパラダイムが、慢性疼痛の患者にあってはむしろ病状を複雑化させる足かせになっていることも少なくないのです。

痛みを心理的要因ばかりで捉えるべきではありませんが、痛みに関わるスキームの介在に気づいてみると、そこにその人の長い歴史が見えてくることもあります。

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