らびっとクリニック院長の医療雑話

奇跡の薬(1)

投稿日:2013/4/14

コルチゾンに代表されるステロイドホルモンには、副腎皮質ホルモン、糖質コルチコイド、コルチコステロイドなど様々の呼ばれ方があります。薬品名でいうとハイドロキシコルチゾン(サクシゾン、ソル・コーテフ)、プレドニソロン(プレドニン)、メチルプレドニゾロン(メドロール)、ベタメタゾン(リンデロン)、デキサメサゾン(デカドロン)、トリアムシノロン(ケナコルト)などがあります。ドーピングで使用されてきた筋肉増強効果のある蛋白同化ステロイドホルモンと混同されることがありますが、別のものです。
左右の腎臓の上には副腎という1cmくらいの小さな脂肪組織があります。糖質コルチコイドは副腎の皮質領域(表層に近い部分)で産生されるホルモンです。この働きが弱くなると、血圧が極端に下がったり、血中のナトリウムが減って脱力症状をともなったり、感染症の重症化につながったりします。副腎機能不全と言われる状態です。副腎皮質ホルモンは体にストレスがかかった時に体に活力を与える戦うホルモンともいえるでしょう。

プロローグで紹介したステロイドホルモンを関節リウマチ患者に初めて使用したHenchは、副腎機能不全の症状が関節リウマチの症状に似ていることに気づいたことが、リウマチ患者へのコルチゾン使用のきっかけになった言われています。

実際、コルチゾンをの使用が一時的にはリウマチ患者の関節炎症、倦怠感、消耗状態などの諸症状を劇的に改善することが知られてから広くこの薬の使用が広がりました。しかし程なく厄介な問題が患者と医者を苦しめることになります。

風貌、体型の変化
満月様顔貌という独特の顔形と中心性肥満(手足が痩せてお腹が膨れるタイプの肥満)は多くの女性に大変評判の悪い合併症です。また皮膚が薄くなたり多毛になることもあります。

糖尿病、高血圧症、骨粗鬆症
糖質コルチコイドにより様々な代謝の変化が起こり、生活習慣病とも言われるいろいろな病気にもなることがあります。

易感染性(感染症にかかりやすくなること)
細菌や真菌、ある種のウイルスによる感染症にかかりやすくなることがあります。

このような様々な副作用が一部の患者さんには現れてしまう可能性があるのですが、それらのマイナスを補ってあまりある薬理効果がステロイドにはあります。つまり最強の抗炎症・免疫調節薬であることが、この薬が多くの分野で最も重要で欠かせない薬である理由です。この薬ほど医師の信頼と畏れを集めている薬は多くありません。
世の中にはステロイドほど怖い薬はないという「常識」がまかり通っていますが、膠原病をはじめとする多くの自己免疫性疾患の治療に糖質コルチコイドは今のところなくてはならない薬です。この薬が登場する前には致死的な不治の難病であった疾患が今日コントロールできるようになり生命予後の改善をもたらしたのは他ならぬ副腎皮質ホルモンあってのことでした。

ただそうは言っても厄介な薬であることには変わらない。医者も「できることならステロイドなど使わないで済ませたい」と思っているし、一部の患者は薬局で処方されたステロイドをそのまま捨ててしまったりもする。健康食品メーカーの宣伝文句の一つに「ステロイドにかわるサプリメント」などというものもさかんに喧伝されたりする。

さてHenchが開いたパンドラの箱を今私たちはうまく扱えるようになったでしょうか。

前口上が長くなりましたがそろそろハルコさんの話に戻りましょう。

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