月に一度だけ郷里の言葉で外来診療をしています。私が香川大学(当時は香川医科大学)を卒業してすぐにお世話になった高松市の小さな民間病院で半日だけのリウマチ外来。第4土曜日はそのためにクリニックを休診にしています。
両親が暮らしていたころには月1度の「帰省」毎に実家を見舞っていましたが、今は空き家に立ち寄ることも滅多にありません。実家に寄る理由もないので、いつもとんぼ返りの帰省です。「よくそんなに遠方まで日帰りで外勤に行きますね」とあきれられるのですが、 私自身うまく理由を答えることができませんでした。
最近実家に寄らない「帰省」のたび思うのは、私はおそらく昔使っていた言葉を使いに帰っているのではないかということ。(石川啄木の歌にもありました)
それと郷里の言葉遣いで診療することが、開業医としての自分自身に何がしかの悪くはない変化を与えるような気がします。身の丈の自分を鏡に映すような。
「どななんですかア?最近は。どっか痛かったんかいなア」
「どこゆーて、せんせなア、あちゃこちゃいとーていとーて、ほんまえらかったわア」
「ほなけんど、声だけは元気そーやなア」
「おっきょい声もでんよーなったら、しまいやけんのオ。せんせも気イつけまいでエ」
といった具合。昼過ぎに近くのうどん屋で腹ごしらえをしてすぐ高松空港に向かいます。墓参りをしなくても父親にあったような気がします。でも月曜朝にはさいたまモードにちゃんと戻ります。