らびっとクリニック院長の医療雑話

医師そのものが治療薬?

投稿日:2012/3/3

私はリウマチ科の内科医ですが、こころの問題にも関心があります。都内の大学病院の心療内科外来を見学させていただきながら心身症の勉強をポツポツと最近始めました。五十の手習いです。私は、ベテランの心療内科教授の外来を見せていただきながら、治療のために使われる言葉の重要性を今更ながらに感じています。薬で治すだけではない。言葉が、もっといえば力のある言葉を発する医師の存在・自我が、患者に強く働きかけることに改めて驚いています。このように医師自身が有効な治療者であるために、治療的自我(自己)なるものが必須であるというのです。

EBMの側からは「プラセボ」として排除されかねない効果ですが、人を癒す力は医師の人格に深く関わる治療的自我の質によって決まるのかもしれません。良い医師の使う良い薬と良い言葉。

私にリウマチ医の手ほどきをしていただいた亡き恩師は、Dペニシラミンという古いリウマチ薬をよく使われていましたが、このくせのある薬を使いこなすのはなかなか大変でもありました。厄介な有害事象が少なくなく、レスポンダーと非レスポンダーの見極めに時間がかかるためです。でも恩師が使うとこの薬は実に切れ味良く効くのだと評する声をよく聞いたものです。このような見えない技というものが名医と呼ばれる医師には必ずあるのです。EBMも使いますが、自分自身の人格そのものを治療に使えることの方が遥かにかっこいいと思います。

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