(本日は「だ、である」の文体にて)
とても不思議な現象にも思われるのだが、当クリニックの女子職員は概ね体育会系でかつ、おそらくは肉食系である。職員のプライバシーに配慮して偽名を使うが、看護師の〇〇はボクシングのようなダンスをしながらひたすら体を鍛えるのが趣味だ。診察介助中にもストレッチやダンスのステップをしているので時に私は迷惑である。何でも噂では腹筋が6つ以上に割れているらしいが私が確認したわけではない。事務職員の△△は高校時代ソフトボール部だった。守備はセカンドらしいが何番打者かは聞き忘れた。彼女も日毎打撃練習をしているのか昼休みに疲れて昼寝をしたりする。朝の朝礼では「今日も普通にがんばりますっ」などと気合が入っているのかいないのか分からないようなことをいう。
一方私は繊細で微妙な外来診療を提供しようとしているのにもかかわらず、診察室のバックヤードから野太い彼女らの体育会系笑い声が響いてきてしばしば大変迷惑している。大人しい草食系女子と思われたのは開院わずかに1か月ほどのことであった。体育会系女子たちは、ときに院長の機嫌を損ねる。院長がわがままだからかもしれない。不機嫌になると電子カルテの入力ミスが頻発してしまう。「また院長、処方間違ってますから。チャンとニューリョクしてくださいね」と、腹筋の割れている(らしい)看護師〇〇は私にしょっちゅうダメ出しをする。したがって不機嫌な外来の私の入力ミスはますます改まる気配がない。
その看護師〇〇が、自分の得意技で患者さんにリハビリ指導をせっせとするようになり、これが意外に評判がよいというのだ。また職員にもあやしげなストレッチ体操をせっせと布教しまくっており、近々職員のダンスサークルが結成されそうな勢いである。看護師〇〇が猫背の院長に、どうしてもストレッチをやれと言って聞かない。壁に背中と踵を当てて、肩甲骨と壁の間にマクラをいれた状態で、両手を壁伝いに上げ下げさせる。バカみたいな運動だがこれを5分程続けろというのだ。何でも猫背矯正のための体操らしいが、壁に張り付いた私がモゾモゾと手を動かすストレッチの様をみて「ゴキブリ体操」と揶揄した声を私は聞き逃しはしなかった。(つづく)