らびっとクリニック院長の医療雑話

亡き父のための時計にまつわる雑話。

投稿日:2013/3/6

1月に父が肺癌で亡くなり、慌ただしく過ごしていました。四十九日が終わってみると、何十年も前のいろいろな瑣末な記憶がふと蘇る事が多く、不思議な感覚に戸惑ったりします。
幼少期過ごした工場社宅の居間の柱にゼンマイ仕掛けで振り子のついた柱時計がかかっていました。昭和40年代の頃です。文字盤の4と8あたりの位置にゼンマイのネジ穴があって、数日毎に真鍮のねじまきでギリギリ巻き上げる必要がありました。「昭和27年9月…」と時計の扉の奥に手書きで購入の日付が書いてありました。姉が生まれた日、父が記念に購入したのだそうです。
少し時間がたって、私が高校生になったときに入学祝いに当時はやっていたクォーツ腕時計を父に買ってもらいました。合格発表の日、父と二人で田舎の寿司屋に行ったことを思い出しました。
数年前の「父の日」に私の妻が父に贈った腕時計はずいぶん気に入ったようでした。病院でMRI検査をした際に磁気の影響で壊れてしまったので私に修理に出してくれといいました。新しいものを買った方がずっと安上がりだというのに。
死の間際まで父は修理済みの腕時計を腕に巻いていたそうです。看護師が時計をはずそうとしたところ、薄れゆく意識の中で突然怒り出したのだと、最期の介護にあたっていた姉から聞きました。
父にとって時計はいろいろな時代でその時々の時間と場所と家族を繋ぎ止めるアイテムだったのかもしれません。父の腕時計は形見となって、今は私の左腕に巻かれています。

さて、これまで個人的な雑感を綴ってきたこのブログは、これでいったん終了いたします。これからは、診療雑話として、ちょっとメディカルな情報ブログとして近々再開するつもりです。I’ll be back…

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