らびっとクリニック院長の医療雑話

中野区医師会講演会

投稿日:2015/4/11

中野区医師会にお招きいただき線維筋痛症と慢性疼痛の講演を行いました。

内科医にとっては慢性疼痛は大変分かりにくく付き合い難い病気です。現場で悩みながらも患者に真摯に関わっていこうとされている開業医の先生方と交流できて大変貴重な体験でした。私は痛みに対して楽天的でありたいと思っています。しかし慢性疼痛のほとんどは内科的治療だけで治ることはない。私の母親は強烈な「痛み行動」で周りの人間を翻弄させます。「痛み行動」とは、無意識ではあるにせよ痛みを武器として周囲に「悪」影響を及ぼすあらゆる行為のことです。巻き込まれる家族も辛いのですが患者自身にはそういう自覚はない。痛みの訴えはしばしば暴力的で多くの人を傷つける。しかし多くの「痛み患者」は自分のことだけを被害者であると感じている。私は多くの「痛みの患者」に接する中で、痛みに溺れず前に向かっていくことができる人だけは救いたいと思います。医師も人間です。苦痛のみを訴えて自ら動き出せない人には多くの力は避けないのです。すべての人は救えない、とりわけ「痛み行動」が生きるよすがになった患者を救うことはできないと感じています。中野区での講演演題のサブタイトルは「内科医にできることとできないこと」。ある種のタイプの患者は我々には診ることができないと最初から白旗を上げました。一方救える人にはできるかぎりの手を差し伸べたい。痛みのトリアージといってもいいでしょう。限られた医療資源を有効に使うことが我々内科医を痛み治療から決別させない唯一の道であると感じているのです。

私はそれでもなお、この不可解なる痛みを理解したいとstruggleしている。痛みのモンスターのような母親を諦めながらもそれでも何か良い手はないかとため息をつく。この繰り返しこそが私の痛み診療の宿命だろうと観念しながら。

何故らびっと? Concept 院長ブログ 医療雑話 クリニックからのお知らせ Doctor's Fileにて紹介されました
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