米国歌手のレディー・ガガさんが線維筋痛症のための全身疼痛のため休業宣言したことを、あるテレビ局の方から電話で教えられ、突然コメントを求められました。多少言葉は違いますがおおむね以下のようなやり取りをしました。
Q)線維筋痛症は日本でも200万人もいると伺いましたが一言で言うとどのような病気でしょうか?
私)3ヶ月以上の長期にわたって全身の筋骨格の痛みが続く病態です。
Q)この病気になりやすい人の特徴はありますか?
私)線維筋痛症は単独の病気ではなく、様々なバックグラウンドを持つ方々を含む慢性痛の症候群(同じ症状を持つ患者のグループ)のことだと理解しています。共通するのはストレスによる脳の疲労や機能異常により、脳の中で痛みに対する過剰反応(誤作動)が生じているような病態だと考えられています。過活動で几帳面な完璧主義の傾向の人に多いという指摘もあります。
Q)レディー・ガガさんがこの病気で休養宣言を出されたことをどう思われますか?
私)過剰なストレス環境を避けて心身の安静を取るということであれば妥当だと思います。
Q)治療法はあるのですか、治る人もいますか?
私)運動療法や認知行動療法が重要ですが、薬物療法では、現在プレガバリンとデュロキセチンが日本の医療保険上、線維筋痛症に対しての使用が認められています。比較的短期間で治る人もいますが、長期療養が必要な方や難治性の方が少なくないことも事実です。
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私はまだこの病気が特殊な身体疾患で、薬などですっかり治る「カラダだけの病」と考えられている風潮には違和感を感じています。「心の問題」(=中枢神経の機能障害)が、少なからず慢性疼痛に関わっていると感じています。しかしその部分は大変デリケートな問題であり、しばしば患者さん自身も医師も深く掘り下げることを避けてしまいがちです。「心がつらいとからだもつらい。」そのようなところからいつも診療を始めるのですが、それでもしばしば患者さんは怒ってしまいます。「結局あなたも痛みを気のせいにして、患者をたらい回しにするだけの医者か!」とお叱りを受けることもありました。
私は少しずつ診療の幅を広げていきたいと願っていますが、現状では当院で対応が困難であることを告げなければならない患者様も少なからずいます。HPに「痛みに寄り添う」と書きながら人を傷つけるとは酷いと、ネット上で批判され大いに反省もしましたが、全ての痛みを診療できる訳ではないことも告白せざるを得ません。
どうか慢性痛の診療で来院される方にお願いがあります。診察の場で家庭環境や仕事の環境まで踏み込んだ質問をすることをどうかご了解ください。なぜなら慢性痛の多くが「怒り」や「悲しみ」の感情を差し置いては本質を理解できないからです。慢性の痛みは心と体の双方に関係があるため、現在心療内科、精神科におかかりの方はメンタル科の主治医に当院受診の旨を告げていただき、診療情報提供書をご持参ください。私のできることできないことを明確にご理解いただいた上で、診療のご相談させていただきます。何卒ご理解のほどお願い申し上げます。