らびっとクリニック院長の医療雑話

ディオバン報道に思う

投稿日:2013/8/12

ノバルティス社のディオバンという降圧薬が患者の間でも話題になっている。
「先生、私の飲んでいたディオバンは、とんでもないお薬なんですか?」
「臨床研究のなかでデータ操作を行って、他の同系統の薬よりも有効性が高いという結果を報告したという点で犯罪的だったということでしょうかね」
「でも実際にその薬を服用していたものとしては許せない気がします。そんな手続き上の問題だけではないような。」
降圧薬としての有効性が否定されたわけではないが、「不祥事」を起こした薬をあえてそのまま継続しようという人は少ないため、私のクリニックでも同系統の薬に変更することが多いものの、積極的に他社のメーカーのものに誘導しているわけでもない。(T社のBという薬やD社のOという薬などに。)

しかし今回の事件の「けしからなさ」の本質はどこにあるのだろう?統計解析に発売元の社員が関わりデータ改ざんしたことなのか、利益相反を公開せず論文を投稿した研究グループに非があるのか、それを制御できなかった大学の問題なのか、さらに臨床研究を指導すべき厚生労働省の問題なのか、インパクトファクターの高い論文を引用するMRの言葉を無批判に信用して処方した現場の内科医が悪いのか、広告媒体も悪いのか、そのすべてか?

私も現場にいる内科医として今回の問題の深さを感じるものの問題の本質は明確に見えているわけではない。ある薬剤を開発しそれが患者の病気に影響を与えるまで、どのくらいのお金がどこに流れて行くのか朧げながら見えたことが報道の関心を高めて行ったのだろう。
いろいろの薬の効能をうたい差別化するために、影響力の高い論文に発表することは、研究実績を求める大学側の事情と販路拡大を求める製薬会社の利益が完全に一致することがこのような産学協同事業を推し進めて行く力になる。産学協同事業により救われる患者が圧倒的に多ければこういったことも問題ないのか、一人の犠牲者が出てもその事業は悪なのか、ディオバンの服用に怒りを感じていた彼女の言うように、手続き上の問題がクリアしてさえいれば問題なかったのか?

私たちの世界は様々な利益相反するネットワークに封じ込められていて、中立の立場というものが存在しうるのかどうかわからない。患者を救う行為が薬品会社を潤し、開業医の糊口を凌ぐことにつながり、win-winの関係があればすべてはOKという人もいるが、御都合主義を感じないわけでもない。

何故らびっと? Concept 院長ブログ 医療雑話 クリニックからのお知らせ Doctor's Fileにて紹介されました
↑