らびっとクリニック院長の医療雑話

アンナ・カレーニナの有名な冒頭

投稿日:2015/4/7

幸せな家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある。(レフ・トルストイ「アンナ・カレーニナ」)

「幸せな家族」を「治癒する病気」に、「不幸な家族」を「難治性の病気」に置き換えて読むと、この19世紀ロシアの文豪の名台詞は、日常の私たち臨床医の実感に重なる。良くなる病気の治療ガイドラインは確固としたもので、それに準じて治療して行くと概ね多くの患者が同様の経過で良くなっていく。一方治療薬も診断基準も明確でないような「不幸な病気」(たとえば慢性疲労や慢性疼痛)は一人一人の治療反応性がまるで異なる。それぞれの患者ごとに治療上の難しさがある。

多くの医者は、「幸せな病気」にも「不幸な病気」にも分け隔てなく誠意を尽くすが後者に対峙するには相当の覚悟と体力が必要である。

Evidence based medicine: EBM(統計学的証拠に基づく医療)は多くの場合「幸せな病気」で有効に機能するが「不幸な病気」には一人一人の病気の物語を対話の文脈の中で理解する作業が必要であり、これをnarrative (based) medicine: NBM(物語と対話の医療)という。ただしEBMとNBMは相互に補完するものであっても、対立するものではないのだという。まだまだNBMの重要性を強調する医師が多いとは思わない。

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