らびっとクリニック院長の医療雑話

やがて哀しき同窓会

投稿日:2017/11/30

私は先の東京オリンピックの前年に香川県の小豆島に生まれ、高校・大学時代を高松で過ごしました。大学を卒業した翌年元号が平成に代わりました。地元で数年間臨床研修をしたのち、リウマチ膠原病を専門的に勉強したいと思い、1995年に上京しました。阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件があった年です。2001年のSeptember 11 attacksをワシントンDC近くのベゼスダという街で間近にみて、2003年3月、米国を離れる1週間前にイラク戦争が始まりました。大学の病院を辞め開業準備をしていた2011年3月に東日本大震災と福島原発事故が発生しました。世の中の大きな出来事の歴史的な意味をその事件発生直後には理解できないように、自分の人生のその時々の瑣末な出来事の意味も後になってみないとわからないのだという気がします。

先日、卒業後30年近く経って初めて大学の同窓会に参加しました。懐かしい同窓生との邂逅を喜ぶとともに、友人の訃報を確認して哀しみを共有する場でもありました。

Aさん:「Kの七回忌が先日終わりました。」

私:「もうそんなになるのですね。ご両親はいかがでしたか?」

Aさん:「お父様は数年前に亡くなりました。お父さんがご存命の頃お会いして、Kが医者として使うことが一度もなかったネーム入りの聴診器を私に使って欲しいと言われていただいたのです。」

 AさんはKさんの親友で、Kさんは私と同じサークルで活動していた後輩でした。Kさんは私と同じ医局に入ったのですがその直後に交通事故で頭部外傷を負い、意識のないまま10数年間眠り続けました。

Aさん:「今もクリニックで彼の聴診器を使っています。・・・どうです、二次会は参加されませんか?」

同窓会の二次会の幹事役のAさんのお誘いを丁重にお断りして、私は銀杏並木の寒空の下、熟した実を踏みつけぬよう注意しながら帰路に着きました。「瑣末な出来事」ばかりではなかった30年の時間が少し重く感じられました。

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