らびっとクリニック院長の医療雑話

ふたりの筋痛症ーエピローグ

投稿日:2013/4/3

リウマチ性多発筋痛症と線維筋痛症。この二つは似て非なる疾患です。リウマチ性多発筋痛症が滑液包炎という炎症を基盤にした疾患であるのに対して、線維筋痛症はまだまだ病態が明確に解明されてはいないものの、脳と脊髄の疼痛感覚の過剰な伝達と認知の病気と考えられています。炎症は臨床検査によって「見ること」ができます。赤血球沈降速度やCRPの上昇として見ることができるし、超音波検査のパワードプラ法を使うと炎症を起こしている滑膜部分が文字通り赤くなって明確に見えます。一方線維筋痛症の方は一般的な血液検査や画像検査では異常がないことが特徴とも言えます。見えない痛みであることは、患者本人にも医師にも大変困ることです。痛みを裏付けるものが本人の言葉の中にしかないために、この疾患に懐疑的である医師も少なくありません。病気を認めてもらえないことでさらなる苦しみを抱えることになります。

しかし医学は進歩します。今でこそ「見える痛み」になったもののリウマチ性多発筋痛症もかつてはよくわからない炎症疾患で、今ほど広く認知されていたわけではありません。線維筋痛症の診断技術も現状では圧痛点の確認によるしかないのですが、いずれ様々な検査方法が確立し治療法も開発されていくはずです。線維筋痛症がいずれは「見える痛み」になり、この物語の主人公のタエコさんの重荷が消えて行く日が必ずくると思います。それは関節リウマチの世界でこの10年の間に現実に起こったことなのです。

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