「死すべき定め」(みすず書房)という本をぜひ多くの人に読んでほしいと思います。著者アトゥール・ガワンデは現役外科医でハーバード大学公衆衛生大学院教授であり、同時に優れたノンフィクション・ライターでもあります。
この著書の中では、多くの死(幸福とは言い難い最期)が描かれています。高齢者の死、癌末期患者の死など・・・。実在した終末期患者が多く登場しますが、現代医学によって患者の最期の貴重な時間が残酷に奪われてしまう現実が描かれてます。感情を抑え、事実を正確に連ねた症例報告のような文体でありながら、心が揺さぶられる優れた文学作品です。
著者ガワンデが自身の父親(父親は泌尿器科医)の最期に関わる最終章が圧巻です。医師である息子が医師である父の死を、おそらくは医師としてではなく息子として見守っていく姿に著者の豊かな人間性と哲学を感じました。父の遺灰を故郷のガンジス川に流すシーンを描いたエピローグは涙腺にきます。
是非オススメです。