らびっとクリニック院長の医療雑話

「年のせい」ですまされやすい筋肉痛

投稿日:2014/4/24

肩や股関節の周辺には滑液包と言う、クッションの役割を果たす水袋状の構造があります。中に滑液というぬるぬるした液体の入った袋で、骨と周囲の筋肉や靭帯がこすれ合う場所にあって衝撃を緩和しています。

リウマチ性多発筋痛症という病気はこの滑液包に炎症が起こって肩や腰や股関節周辺の筋肉が痛む病気です。筋肉自体に炎症が起こっているわけではないので、筋細胞が壊れると上昇する酵素(CK、LDH、アルドラーゼなど)は正常です。またレントゲン写真でも異常はみられないことが多いのです。

血液検査でCRPや赤血球沈降速度などの炎症マーカーが上昇しており、関節エコーやMRIで滑液包の炎症がみられることで診断できますが、意外に診断に手こずる例も多いのです。

高齢者に多い病気なので、重篤な感染症や悪性疾患を疑われたり、反対に単なる「年のせい」で片付けられたりします。少量のステロイドホルモンが劇的に効くので早く診断して治療する事で患者さんに大変感謝されます。

かく言う私も自分の母親があちこちが痛い痛いとうるさく訴えるのを「年のせい」と数ヶ月以上取り合わなかったのですが、つい最近になって血液検査で炎症反応の上昇をみてやっとリウマチ性多発筋痛症に思い至ったような次第。「灯台下暗し」といううか「紺屋の白袴」というか(ちょっと違うか?)。プレドニゾロンをのみだしたら、2週間後には車椅子を手放すことが出来ました。

高齢化社会は高齢者が少数派でなくなる社会。昔のように「年のせい」を理由に思考停止してはいけないことにしばしば気づかされます。

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